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米国の航行の自由作戦(FONOP)と南シナ海

南シナ海の主権を巡って関係諸国と中国が争っていますが、今のところ中国に味方する国はありません。当然ですね、全部俺のもの、と主張しているわけですから。中国は強大な武力を背景に強引に進出してきているので、東南アジアの国力の小さな国は泣き寝入りするしかないのでしょうか?ここで米国は、助け舟を出して、中国の強引な主張を無視する戦術に出ました。それが航行の自由作戦(FONOP)です。当然米国の国益にもかなっているのですよ。そうでなければやりません。


タイトル「米国の航行の自由作戦(FONOP)と南シナ海」
漢和防務評論20191011(抄訳)


KDRランカウェイ、KHOO JIN KIAT特電:
米国は、2015年から南シナ海での航行の自由作戦(FONOP (FREEDOM OF NAVIGATION OPERATION))を開始しすでに約4年が経過した。この間米国は明らかにFONOP重視の姿勢を強めている。
米国の南シナ海でのFONOPを2015年10月から2019年4月までの4年間に区切ると、2015年以前は、公表或いは非公表を含めてFONOPは記録されていない。一方FONOPは、米国が1983年から実施してきた国家政策としての作戦である:すなわちFONOPは、米海軍及び空軍兵力を通過、航行させる行動であり、他国の”過度の海洋主権主張”に対抗し、国際的に公認された権利と自由を強化するための作戦である。
米国官方のFONOPに対する立場は、極めて明確である。国際法が許可しさえすれば、いかなる地域でも、米国は上空を飛行し、航行し、任務を遂行することができる、というものだ。(THE UNITED STATES WILL FLY, SAIL, AND OPERATE WHEREVER INTERNATIONAL LAW ALLOWS)
米国の南シナ海のFONOPを2つの時期について検討する。一つは南シナ海仲裁裁定前の時期であり、二つ目は南シナ海仲裁裁定後の時期である。
米海軍が展開した最初のFONOPは2015年であり、南シナ海仲裁裁定前夜であった。そのときはオバマ大統領の任期の最後の段階であり、同大統領時代に展開された第一回目のFONOPは2015年10月であった。当時米海軍駆逐艦DDG82が中国が支配する渚碧礁及び美濟礁の12海里内海域に航行進入した。
第一回目のFONOPで注意すべきことは、DDG82がマレーシアを訪問終了後に行われたこと、マレーシアから出発して作戦を行ったことである。すなわち米海軍の最初の南シナ海FONOPは東南アジア国家から出発して行われたのである。いわんやマレーシアは南シナ海の主権争いの当事国である。これがKDRが2015年を計算の出発点にした理由である。
しかし補足すべきことは、マレーシアは、必ずしもDDG82がFONOPを行うことを知っていたわけではない。なぜなら米軍は、政策として、外国人に軍艦のその後の行動を知らせるはずがないからである。しかも最初のFONOPは、米国は単艦で行っている。
2016年1月から、米海軍のFONOPは南シナ海北部に拡大した。米軍のDDG54駆逐艦は、中国が支配する西沙中建島(TRITON ISLAND)に航行進入した。
2016年5月米海軍DDG110は、中国が支配する南沙諸島の永暑礁でFONOPを行った。:2016年10月、米軍DDG73は、中国が支配する西沙の中建島及び永興島でFONOPを行った。したがってオバマの時代、米海軍は4回、FONOPを行ったと記録されている。:しかもオバマの時代から米海軍は、単艦をもって同時に2つの島嶼にFONOPを行っている。
2017年、米国はトランプ大統領の時代に入った。トランプは、最初のFONOPを2017年5月に行った。米軍DDG105は、美濟礁に進入した。続いて、2017年7月、DDG63が西沙の中建島に向かい、2017年8月、DDG56は美濟礁に、2017年10月、DDG90は、南シナ海西沙群島を巡航した。したがって2017年、公開された記録によると、米軍は4回のFONOPを行った。全体的に見て、2017年のFONOPは2016年の状況と概ね同じであった。
しかし2018年に入ると、航行の自由作戦の頻度と内容が大きく変化した。
2018年1月、米海軍DDG70は、中国とフィリピンで係争中の中沙の黄岩島に接近し、2018年3月にはDDG89が美濟礁に向かった。2018年5月、米軍の2艘の軍艦DDG76とCG54が同時に西沙群島でFONOPを行った。米軍が2艘の軍艦を展開させたのは初めてであり、従来は単艦で行っていた。しかもこの時は巡洋艦と駆逐艦の共同編隊であった。
2018年9月、DDG73は南薫礁と赤瓜礁に向かった。これは単艦で同時に2つの島礁に向かったFONOPの2回目であった。この時は、中国海軍の170駆逐艦の対応は激烈であった。中国艦はプロらしからぬ危険な動作で米海軍DDG73に異常接近した。
2018年11月、米軍CG62巡洋艦は西沙でFONOPを展開した。これは米海軍巡洋艦としては2回目のFONOPであった。2018年を総括すると、米軍が公開した記録では、南シナ海で5回FONOPを行っている。2019年1月になっても、依然として米軍はFONOPを継続している。同月、DDG85は、西沙群島の趙述島、東島、永興島海域を航行した。これは、単艦で同時に多くの島にFONOPを行った3回目であった。
2019年2月、米海軍は再度DDG-111及びDDG-88を出動させ美済礁に向かった。これは2艦でFONOPを行った2回目であった。2015年から2019年4月まで、米国が公表したFONOPは4年間に15回である。15回の南シナ海でのFONOPはどのように変化してきただろうか?
第一、2018年のFONOPは、2015年から2017年のFONOPに比べて、明らかに強化されている。言い換えれば、2016年の南シナ海仲裁裁定の前と後では、米国のFONOPが変化している。なお米空軍のB-52が南シナ海を飛行する”継続して爆撃機の存在を示す”行動は含まれていない。B-52の南シナ海における飛行のFONOPは引き続き増加している。このことは、米軍の南シナ海における軍事的存在を示す行動は増加中であり、減ることはない。影響力の保持は不変である。
第二、トランプ大統領時代のFONOPは、インド太平洋地区を自由に開放するための戦略的軍事活動として、或いは中国による過度の海洋主権拡大に反撃しようとして行っているのかもしれない。結論を言えば、FONOPは、この政策に全て符号している。
しかしながら鍵になる問題とは、FONOPが南シナ海における軍事衝突に発展する危険を孕んでないか?ということである。この点については、2018年9月のFONOPにおいて発生した激烈な妨害行為から答えが得られるかもしれない。
第三、15回に及ぶFONOPは、南シナ海北部の西沙から南部の南沙に至るまで行われており、南シナ海における米、中の対立が全面的であることを示している。また米軍の準備は周到であり、西沙と南沙で同時に軍事行動を展開し、全面的に中国を牽制する活動を行っている。次の段階は、米軍の2艘の軍艦が分離して西沙と南沙で同時にFONOPを行うかどうか注目しなければならない。
第四、15回のFONOPは、大部分は米国の官側からの公表、或いは米国のメディアを通じて知らされたものである。しかし黄岩島だけは状況が特殊であった。
なぜなら中国は、過去のどの作戦よりも速やかにこの事実を認めたからである。このことは、中国が黄岩島はすでに中国の支配下にあることを宣言したいためであり、しかも米軍の黄岩島に対する行動に極めて神経質になっているからである。また黄岩島に対するFONOPによって、中国がすでに黄岩島を全面的に支配し、中国は黄岩島がフィリピンに属することをもはや一切認めない姿勢であることを示そうとしている。
第五、米国のFONOPは、巡洋艦が単艦で行ったものや、巡洋艦と駆逐艦の編隊で行ったものがある。戦術から言っても、行動力が拡大している。今後のFONOPは、米国海空軍が空と海のFONOPを同じ日に行うかどうか?今後注目すべき要点である。
第六、米国が2015年に南シナ海でのFONOPを開始してから、すでにこの問題は国際化している。西側国家は、それぞれ各種艦艇を南シナ海に派遣し国際化したFONOPを行っている。英国とフランスがその一例である。しかし現在、米国とその同盟国との共同作戦で中国が支配する島嶼に対する航行の自由作戦を行った公開記録はない。
第七、その他、南シナ海での主権争いに関わる国家への影響;ASEAN外交消息筋はKDRに次のように述べた。中国はASEAN各国と一緒に米国のFONOPに反対したがっている、と。しかし現在、ASEAN国の各種官側の声明によると、米国のFONOPが南シナ海の安定を損ねるはずがない、と述べている。現在中国だけが米国のFONOPを南シナ海の安定を損ねていると見ており、ASEAN国はそのような立場はとらない。したがって現在出せる結論は、FONOPが南シナ海の安定を損ねているとの見解は、中国の一方的な見解である。ASEAN国の中で、現在ベトナム外交部のスポークスマンだけが、米国のFONOPに対する回答を寄せている。;ベトナム外交部のLE THI THU HANG氏は、ベトナムは、各国の国際法に基づく南シナ海の航行及び飛行の自由を尊重する。
各国に国際法の尊重と厳格な履行を求めたい、と述べた。この言葉の意味は、ベトナムは、西沙における米軍のFONOPに反対しないという意味である。
第八、米国の南シナ海におけるFONOPは、各国の海洋権威筋或いは政府の官員等をおおいに刺激した。特に中国の主権主張の根拠について関心が集中し、学者あるいは政府官員は中国の南シナ海での主権主張を研究し或いは報告した。これらの研究は、必ずしも中国の南シナ海での行動を束縛するものではないが、国際学術界の関心が高まるに従って、得られた結論は、中国の主権主張の論拠の基礎を弱め、さらには中国の理論の信用力に影響を与えた。
もしこれらの研究報告が2016年の南シナ海仲裁裁定を根拠にしたならば、今後極めて強力かつ有力な論拠になるであろう。
結論を述べると、米国のFONOPは、米国自身の必要性からでた迅速な対応に過ぎなかったが、FONOPを通じ、南シナ海或いは中国の南シナ海での行為を牽制することができた。いわば、現在の南シナ海の米中間のゲームにおいて、FONOPはすでに必要不可欠な一手となった。


以上

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